相続した不動産の名義変更について
不動産の名義変更を長期間放置するとどうなるか
そもそも、なぜ不動産の名義変更が行われずに放置されるということが起きるのでしょうか。理由は大きく二つあります。まず一つ目は、名義を変えるための不動産登記手続きは必ずしなければならないという決まりがない、つまり義務がないためです。もちろん罰則などもありません。二つ目は、期限もないということです。言い換えれば、基本的に誰からも「名義変更してください」という連絡も通知もありませんし、「手続きの期限は○月○日です」ということも言われません。従って認識していても忘れてしまう、名義変更すべき案件自体を知らないということで放置されてしまうのです。
では、不動産の名義人が死亡したことにより、本来は手続きを行うべき相続登記をせずに長期間放置すると、どのような不都合が生じるのでしょうか。
まず相続登記をするためには、いくつもの書類が必要になります。例えば相続人全員の戸籍謄本や印鑑証明書です。親名義の不動産を子供一人が相続する場合なら、相続人である子供は自分の分の戸籍謄本などを取得すればいいので、容易に準備ができます。
しかし、これがもしも不動産の名義が祖父・あるいは曽祖父のまま変更されていなかったとしたら、どうなるでしょう。一代またはもう一代遡って、相続人である可能性のある人を調べなくてはなりません。そして相続人が判明したら、全員分の必要書類を集めることになりますが、近隣に居住しているとは限りません。遠方に住んでいる面識のない人たちに、事情を説明した上で公的文書などを取得して送ってもらうことは簡単な作業ではありません。
また、遺産の分配は必ずしも法定相続分通りに行われるとは限りません。遺言により分配が変わっている場合や相続人同士の協議により変更した場合には、相続登記の際に遺言書、遺産分割協議書の提出も必要になります。過去に遡ってこれら書類がない場合には、現在の相続人の地位にある人全員の合意のもと、改めて遺産分割協議書を作成する必要があります(全員の署名・捺印要)。
このように相続した不動産の名義を変えずに放置すると、所有権を有する人がもはやわからず、正確な状況を把握して正しい形に登記するのに大変な労力が必要になってしまいます。次代に迷惑をかけないためにも、相続登記は早めに進めた方がいいでしょう。
相続不動産の名義変更方法
相続不動産の名義変更の手続きに関しては、自分で行うことも可能です。自分で行えば、コストを抑えることができます。しかし、状況によっては専門家に依頼した方が良いケースもあります。この場合の専門家とは、司法書士です。司法書士に依頼すべき場合とは、主に以下のようなときです。
1.長期間登記しないで物件が放置されていたため、権利関係が複雑化している
2.遺産の分割でもめる要因がある
3.公的な手続きに不慣れである
「1」の場合は、確認しなければならない内容や確認先が多岐に渡ることがしばしばで、そろえなければならない書類も相当数に上ります。「2」は遺産の分配について、複数相続人の間で意見が分かれることによる難しさです。ただし、司法書士は登記に関する専門家なので、相続人間の紛争などということになると相談先は弁護士になります。
一方、相続でもめることがないケースや権利関係がすっきりしているケースでは、自分で名義変更の手続きをした方がコストを抑えられます。基本的には、以下の必要書類を用意して相続登記を申請すればいいのです。
≪必要書類≫
・登記申請書
・対象不動産の登記事項証明書
・被相続人の住民票の除票(本籍の記載要)
・被相続人の死亡時から出生時までの戸籍謄本一式
・相続人全員の戸籍謄本
・遺産分割協議書もしくは遺言(相続人が一人の場合は不要)
・相続人全員の印鑑証明書
・対象物件を取得する相続人の住民票
・対象物件の固定資産評価証明書
上記書類を法務局に提出し、申請を行います。申請に際しては登録免許税を支払う必要があります。税額は不動産の評価額により異なります。また、納税額により収入印紙による納付、現金納付後の領収証書の貼付など、方法も違ってきます。
不動産の名義変更にかかる費用
不動産の名義変更をする際には、いくつか費用がかかります。まず必要になるのが「登録免許税」です。不動産の所有権登記などを行う場合に納付する国税で、一般的には「登記料」などと呼ばれることもあります。登録免許税の税額は、不動産の固定資産税評価額に一定の税率を掛けて算出されます。
この他、必要な書類を取得するための費用が必要になります。多くは役所で取得することになりますが、各自治体により費用は異なります。おおむねの目安としては、例えば、戸籍謄本、住民票、登記簿謄本(全部事項証明書)などは一通500円前後を見込んでおけばいいでしょう。多くの書類が必要になるため、自分ですべてを取得するのは大きな労力となるかもしれません。
時間や労力に余裕がない場合、専門家である司法書士に依頼することになります。相続案件の内容や事務所によって、費用は変わってきます。金額にはかなり幅があるので、必要に応じ確認してください。
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